
寒い季節になると恋しくなる鍋料理。なかでも味噌を溶き入れた「味噌鍋」は、コクと香りがだしに広がり、体の芯まで温まるような一杯です。とはいえ、「どんな味噌を使えばいいの?」「味噌はいつ入れるのが正解?」と迷うこともあるのではないでしょうか。この記事では、味噌鍋とはどんな料理なのかという基本から、味噌の選び方、だし・つゆづくりのちょっとしたコツ、そして日本各地に根づく味噌仕立ての鍋まで、順を追ってやさしく整理していきます。いつもの味噌鍋を、もう少し味わい深く楽しむための参考にしてみてください。
味噌鍋とは?味噌でつくる鍋料理のこと
味噌鍋とは、味噌をスープやつゆのベースに使って仕立てた鍋料理を、ひろく指す呼び方です。特定のひとつの料理名ではなく、「味噌で味つけした鍋」という味わいの系統をあらわす言葉として使われます。実際、鍋料理の味つけは塩・醤油・水炊きなどいくつかの系統に分けられ、味噌仕立てはそのなかのひとつとして親しまれてきたとされています。
味噌は、蒸したり煮たりした大豆に麹と塩を加えて発酵・熟成させた発酵調味料です。旨みや香り、コクをあわせ持つため、だしに溶き入れるだけで味に奥行きが生まれます。大きな鍋を囲む料理と、旨みが豊かな味噌が結びつき、各地でさまざまな味噌鍋が育まれてきたと考えられています。
味噌鍋に合う味噌の選び方|赤・白・合わせの違い

味噌鍋の味わいを大きく左右するのが、どの味噌を使うかという点です。味噌は色や熟成の度合いによって個性が変わるとされ、鍋つゆの印象もそれにあわせて変化します。
一般的に、赤系の味噌は熟成期間が長めで、コクや塩味がしっかりと感じられる傾向があるとされます。白系の味噌は熟成が短めで、米麹由来の甘みやまろやかさが特徴といわれます。そして、複数の味噌を合わせた「合わせ味噌」は、それぞれの個性を生かしながら味のバランスを取りやすいのが持ち味です。しっかりとしたコクを楽しみたいなら赤系、やさしい口当たりなら白系、迷ったときは合わせ味噌、といったように、好みや具材にあわせて選んでみるとよいでしょう。ただし味の感じ方には個人差があり、正解がひとつに決まるものではありません。いくつか試しながら、自分好みの一杯を見つけていくのも味噌鍋の楽しみのひとつです。
味噌鍋のだし・つゆづくりでおさえたいコツ
味噌鍋をおいしく仕上げるうえで、覚えておきたいのが「味噌を入れるタイミング」です。味噌の香りは熱によって飛びやすいとされ、長く煮立てすぎると、せっかくの風味がやわらいでしまうと一般にいわれています。
そのため、まずは昆布やかつおなどのだしで具材にしっかり火を通し、仕上げの段階で火を弱めてから味噌を溶き入れるのが、ひとつの目安とされています。味噌を加えたあとは、ぐらぐらと沸騰させ続けるのではなく、ふつふつと温める程度にとどめると、香りを生かしやすくなると考えられています。食べているうちに味が薄く感じてきたら、少量の味噌を追加して調えるのもおすすめです。だしの旨みと味噌の香りが重なり合うことで、味噌鍋ならではの深い味わいが生まれます。
味噌鍋によく合う具材
味噌鍋のよいところは、身近な具材を幅広く受け止めてくれる懐の深さにあります。白菜や長ねぎ、大根、にんじんといった野菜は、味噌のコクとよく調和します。しいたけやしめじなどのきのこ類は、それ自体の旨みが加わって、つゆをいっそう豊かにしてくれます。
豆腐やこんにゃく、油揚げなども、味噌つゆをやさしく含んでくれる定番の具材です。豚肉や鶏肉を加えればボリュームが出て、主菜としても満足感のある一鍋になります。地域によっては鮭や牡蠣といった海の幸を主役にすることもあり、味噌は肉にも魚にも寄り添いやすい調味料だといえます。手元にある野菜や好みの食材を組み合わせ、気軽に楽しめるのも味噌鍋の魅力です。
日本各地の味噌仕立ての鍋

味噌を使った鍋や煮込みは、各地の食材や食文化と結びつきながら、さまざまなかたちで受け継がれてきました。地域ごとの味噌料理を知ると、味噌鍋の世界がぐっと広がります。
北海道の石狩鍋は、鮭のぶつ切りやアラを昆布だしなどで煮て、味噌仕立てにすることが多い郷土料理で、農林水産省の「うちの郷土料理」にも取り上げられています。広島県のかきの土手鍋は、鍋の内側に味噌を土手のように塗り、牡蠣や豆腐、野菜を煮ながら、味噌を少しずつ崩して味を調えていくのが特徴です。その名前の由来には、味噌を土手状に塗る様子からとする説などいくつかの説があるとされています。
相撲部屋の食事に由来するといわれるちゃんこ鍋には、味つけにいくつかの系統があり、そのひとつとして味噌仕立ての味噌ちゃんこも親しまれています。また、愛知県で親しまれる、牛すじやモツなどを豆味噌でじっくり煮込むどて煮(煮味噌とも呼ばれます)が根づいており、こちらは鍋というより煮込み料理に近い一品ですが、豆味噌の文化を感じられる味わいです。こうして見ていくと、味噌が地域の食材と出会いながら、その土地ならではの味を育んできたことがうかがえます。
まとめ|味噌を選んで、味わい深い味噌鍋を楽しむ
ここまで見てきたように、味噌鍋は「味噌で仕立てた鍋料理」をひろく指す呼び方で、どの味噌を選ぶかによって、コクやまろやかさの印象が変わってきます。だしで具材に火を通してから、仕上げに味噌を溶き入れ、煮立てすぎないようにするのが、香りを生かすひとつのコツです。身近な具材を幅広く受け止めてくれるうえ、石狩鍋や土手鍋のように、各地の食材と結びついた味噌の鍋も数多く受け継がれてきました。
味噌ラーメン専門店として味噌に向き合う田所商店も、味噌それぞれの個性を大切にしています。同じ味噌鍋でも、選ぶ味噌や具材によって表情が変わるところに、発酵食品としての味噌の奥深さが感じられます。手元の味噌の個性を生かしながら、自分だけの味噌鍋を楽しんでみてはいかがでしょうか。






